心 の 病 気 改 善 専 門 店


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概説 / 症状

概説

 多くの消化器疾患に心理的要因が関与していることが知られていましたが、器質的異常(目に見えるような異常)がなくても、機能性の異常によって症状が出現する消化管機能異常症は、臨床上も頻度が高く、その診断基準・分類が統一され(1999年、RomeII基準)、機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGIDs)という概念で診断がつけられるようになりました。その中でも下部消化管の機能異常である過敏性腸症候群(IBS)は、人口の10~20%に認められ、その約10%が患者として医療機関を受診するといわれる頻度の高い疾患です。本症は、とくに思春期に好発する慢性疾患であり、壮年期を過ぎて発症することはまれなようです。  また日々のストレスで悪化しやすいことも知られています。脳腸相関といって、ストレスがかかると腸の運動だけでなく、脳波にも異常が出現したり(福土ほか、2002)、軽度ですが炎症も関与しているともいわれはじめており(サイトカインなどを通して)、こういったサイトカインが情動行動にも関与している(乾、2001)ようです。

症状

 過敏性腸症候群は、腹痛(排便によって改善することが特徴です)と便通異常(下痢型、便秘型、および下痢便秘交替型)を主体とする消化器症状が持続するのが特徴です。しかし体重減少をきたすことはほとんどなく、もし体重減少を認めれば悪性疾患を含むほかの器質的疾患の鑑別診断が必要です。消化管症状も下痢や便秘、腹痛などの下部消化管だけでなく、嘔気(おうき)、げっぷ、胸やけなどの上部消化管症状が出現することもあれば、頭痛、頻尿(ひんにょう)などの全身症状を伴うことが多いようです。これはIBSにおいては、腸管のみでなく全身の平滑筋の機能異常を伴っているからです。また臨床症状はストレス状況下で増悪することが特徴で、抑うつ、不安などの精神症状が多く、身体症状や排便状況にまつわる不安や恐怖も特徴的にみられます。便通異常を訴えながらも、実は放尿の音や臭いに対するこだわりが強く、場合によっては妄想的なほどの社会恐怖に至るものもあります。

診断

 過敏性腸症候群の病型としては、下痢型、便秘型、交替型があります。機能性消化管障害の診断基準が作成され、表:過敏性腸症候群の診断基準に従って診断を行いますが、同時に器質的疾患の除外診断が大切です。鑑別診断としては、大腸ガン、大腸ポリポーシス、大腸憩室炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸結核、アメーバ赤痢、感染後IBSなどがあります。  検査法としては、一般的な検便、検尿、血液検査(白血球、炎症反応、血液生化学など)、腹部レントゲン検査、大腸透視、大腸内視鏡検査などがあり、器質的異常がないことが前提です。また消化管輸送能検査(消化管の動きを調べる検査)や心理テストも行うことがあります。

一般的な治療法

標準治療

 まずは明確で達成可能な治療目標を設定し、そのために必要な治療方法を工夫することが大切です。その意味では、症状をきちんと説明し、心身症として配慮してもらえる心療内科受診をお勧めします。具体的な治療方針としては、「過敏性腸症候群の診断・治療ガイドライン」(福土ほか、2004)に従って進めていきます。図:IBS治療フローチャート(第1段階)の方針にて効果がなければ第2段階で、器質的疾患の除外を行いつつ、ストレス・心理的要因を調べ、不安を取り除く簡易精神療法、リラクゼーション法、また積極的に抗うつ薬や抗不安薬まで使用していきます。こういった方法でも改善しない場合は、さらに第3段階の治療となり、より専門的な心理療法、認知行動療法、絶食療法、催眠療法も検討していきます。 1)薬物療法  症状に応じて下記の薬物を使用していきます。とくに若年の患者においては、抗不安薬や抗うつ薬に対する抵抗が強いのが普通で、処方する場合には、その必要性、口渇、便秘、眠気などの副作用、およびその対処法を納得いくまで説明します。 [1]ポリカルボフィル・カルシウム  ポリフル/コロネル0.5g錠(包)を1回1~2錠(包)、1日3~6錠(包)服用します。その吸水・保水性により、消化管の内腔で膨張・ゲル化して便を正常化し、下痢、便秘の両症状に対して有効性が高いという報告があります。 [2]止瀉剤  主として下痢型の方に使用しますが、下痢便秘交代型に対しても、緩下剤と一緒に用います。また乳酸菌製剤(ラックビー、ビオフェルミン 1回1~2g 1日3回)やタンニン酸アルブミン(タンナルビン1回1g 1日3~4回)、塩酸ベルベリン(フェロベリン錠 1回1~2錠1日3~6回)などをまず用い、より強力なものとしては塩酸ロペラミド(ロペミンカプセル 1回1~2カプセル 屯用)を使用します。 [3]緩下剤  強力な刺激性下剤はできるだけ避け、酸化マグネシウム(1回0.5~2g 1日3回)などを便通の状態に応じて処方します。 [4]運動機能改善薬  クエン酸モサプリド(ガスモチン錠〈5mg〉1回1錠1日3回)やマレイン酸トリメブチン(セレキノン錠〈100mg〉1回1錠1日3回)が有効です。時に倍量投与で有効なことがあります。 [5]抗不安薬  ベンゾジアゼピン系の薬剤がよく利用されます。クエン酸タンドスピロン(セディール錠〈10mg〉1回1~2錠1日3回)、フルタゾラム(コレミナール錠〈12mg〉1回1錠 1日3回)は眠気が少なく使いやすいようです。 [6]抗コリン薬  腹痛に対して用います。臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン錠〈10mg〉1回1~2錠1日3~5回)。 [7]抗うつ薬  近年、抗うつ薬の第1選択薬はSSRI(serotonin selective reuptake inhibitor)になりつつあります。SSRIは副作用が少ないといわれますが、嘔気に注意し少量からはじめます。三環系抗うつ薬(アナフラニール、トリプタノールなど)は抗コリン作用による副作用が強いですが、効果も大きいようです。下痢症状に対しては1回量10~25mgの少量で、有効な場合があります。 [8]漢方薬  大君子湯(だいくんしとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)などの漢方薬も有効なことがあります。 2)精神療法・心理療法  まず大切なのは、自分にあったリラクゼーション法を見つけて試みることです。また、自律訓練法(身体的なリラクゼーション訓練を通じて、不安や不眠などのコントロールを行っていきます)や、絶食療法や絶食森田療法(身体と精神の両者に強く働きかけ、自己の心身の状態への気づきを促します)、家族療法(家族間のシステムの機能不全が症状に関与している場合行います)などを行うこともあります。 ※「標準治療」は診療活動をする専門医により行われている一般標準的な治療法の解説です。厚生労働省や学会で作成した「ガイドライン」そのものではありません。

病後の経過 / 生活上の注意

生活上の注意

 いわゆる健康的な生活を目標とし、可能な限り是正します。まずは睡眠と食事、排便のリズムを規則正しくすることが大切です。食事の内容も大切で、偏食を避けることと、過度の香辛料、カフェイン、飲酒などは悪化させる可能性があります。脂肪食の過度の摂取も膵臓や腸管の刺激が強く、豆類やガス産生食も控えるほうが望ましいでしょう。一方で、高繊維食は消化管運動を調節するという報告もあります。また適度な運動を勧め、また社会的機能の改善も大切です。  IBS患者では、その重症度に応じて様々な精神症状を呈することがあり(Drossmanほか、 1999)、一般内科に入院しても治療困難な場合が認められます。頻度は低いですが、神経性過食症やパニック障害、解離性障害なども認めることがあり、心療内科だけでなく、精神科にて治療していくことが必要な場合も出てきます。大切なことは、適切な医療機関で早期に適切な治療を受けることです。そうすることで、生活の質を高めることが可能です。
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